2015年9月6日日曜日

ファンダメンタル分析は、労多くして益なし


「波に乗る」現象があるかのような錯覚あるいは誤信は、投資信託の販売にうまく利用されています。

投資信託のリターンはほとんどランダムで、今までのリターンとその後のリターンに相関はほとんどないのに、直近のリターンがいい投資信託は、ファンドマネージャーの腕がいいので、その後のリターンもいいだろうと個人投資家は思い込んでしまいます。金融機関もその誤信を利用して、販売に力を入れます。

下図は、過去3年間にリターンが良かった投資信託をリターンの良かった順に10のグループに分けて、その後の3年間のパフォーマンスを、リターン、シャープ・レシオ、アルファで見たものです。1が過去のリターンが最も良かったファンドで、10が最も悪かったファンドです。

過去のリターンがとくに悪かったファンドのグループ(10)のリターンは、その後の成績も悪く、そのことは他の論文でも指摘されています。また、最も成績のよかったファンドのグループ(1)はその後の成績が悪い傾向に合うようです。しかし、それ以外は、明確な相関関係はありません。つまり、過去のリターンが良かった投資信託が今後も良いリターンを上げるという根拠は皆無なのです。

また、すべての分位において、アルファがマイナスであることにも注意してください。つまり、ファンドマネージャーの付加価値はないことを意味しています。

(A) リターン





(B) シャープ・レシオ





(C) アルファ





このようなデータがあるにも拘らず、個人投資家が過去のリターンがいい投資信託を買ってしまうのは、個人投資家の「平均への回帰」に対する認識の欠如にもよると思います。

「平均への回帰」は統計学上の明白な事実ですが、一般の方にはあまり認識されていません。年間60本のホームランを打った打者は、翌年は60本より少しのホームランしか打てないことが多く、また身長190cmの親から生まれた子は、平均よりは高くても190cmよりは小さいことが多いのです。

金融機関は、直近1年間ないし3年間のリターンがよかった投資信託を「いい投資信託」であるかのように、巧妙に宣伝していますが、そのような事実はありません。

このほかにも多くのエビデンスを、拙書「超・株式投資」で書きましたが、8割以上のファンドマネージャーは実力がなく、ベンチマークを上回ったとしても、それは偶然です。

「趣味」でファンダメンタル分析を楽しんでいる個人投資家もいるでしょう。私もその楽しさはわかります。しかし、資産を増やす目的で、ファンダメンタル分析の真似事をするのは、多くの人にとっては時間の無駄です。